FGO元ネタ読書感想文 『フランケンシュタイン』

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怪物は哲学する

FGOに登場するバーサーカー(狂戦士)のサーヴァントの一体、フランケンシュタイン。
第四章『死界魔霧都市ロンドン』においてストーリー中に登場した、無口(というかアァかウゥしか言わない)系サーヴァントである。
ちなみに我がカルデアにはまだいません。

割と勘違いしている人が多いのだが(そして自分もその一人だったのだが)、フランケンシュタイン、というのはかの怪物の名前ではない。
あの怪物を作った人物の名前がフランケンシュタインなのである。

原題は『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』。
メアリー・シェリーが書き上げた三人の人物の視点で展開される一人称の恐怖小説である。
日本語訳は幾つかバージョンがあるが、自分が読んだのは光文社古典新訳文庫。

恐怖小説、と言っても実際のところ、そこまでグロテスクな描写はない。
心理的な恐怖が主なので、グロテスクなものが苦手な人でも問題なく読めるし、想像力を働かせて読めば非常に心臓に悪い。

この小説は三人の視点で語られる。

一人は家族に手紙を送るある船の船長、ロバート・ウォルトン。
一人はフランケンシュタイン……つまり怪物を作り上げた男。
一人はフランケンシュタインの怪物……ホラー映画などでおなじみ、巨大な身体の怪物。

話の構造は入れ子構造になっていて、まずウォルトン船長が姉(マーガレット・サリバン)に当てて書く手紙で物語は始まる。
ウォルトン船長は北極へと向かう航路の途中、そりに乗っていた男……フランケンシュタインを舟に拾う。
疲れ切った彼を手当てしながら聞いたフランケンシュタインのこと、彼から聞いたことを綴る手紙が一番外枠になる。
その中にあるのが、フランケンシュタインの語る怪物の話。
一番中にあるのが、フランケンシュタインが作り上げた怪物の語る怪物自身の物語だ。

この小説の面白い所は、それぞれが何かへの情熱に取りつかれている、というところ。

船長は冒険への情熱に。
フランケンシュタインは命を創造すること(あるいは学問への探求心)と、自分が作り出した怪物への憎悪とある義務心に。
フランケンシュタインの怪物は人間の持つ美しいものへのあこがれと、博士への報復に。

それぞれが執着するもの、特にフランケンシュタインと怪物の執着が、一つの悲劇を作っている。

怪物は学習する

フランケンシュタインの怪物は実は非常に賢い。

最初こそ言葉も話せず、ただ体が頑丈で大柄なだけの不気味な怪物と創造主のフランケンシュタイン自身にさえ思われていた。
しかし時を経てフランケンシュタインの前に現れた怪物は、言語を介するどころか善と悪について哲学的なことを考え、フランケンシュタインに向かって雄弁に語るようにさえなっている。
おまけに読んだ本の引用までしてみせるとあっては、いわゆる似非科学に凝っている人より知的になってしまったようにさえ見える。

怪物が語るこの学習シーンというのが面白くて、いかに彼が言語を覚えたのか、いかに彼が善と悪について哲学するようになったのか。
そしていかにしてフランケンシュタインに対する憎悪を抱き、それでもなお『平和的な交渉』を持ちかけて自分の欲求を満たそうとするようになったか。
この辺りの描写が細かくて、ただ痛い描写やグロい描写を重ねるタイプの恐怖ものよりずっと面白い。

フランケンシュタイン自身、怪物を作るにあたって悪意があったわけではない。
しかし出来上がったものが理想とはかけ離れた醜い怪物だったということで絶望し、怪物を放り出して逃げてしまったのだ。
ここさえなければこのフランケンシュタインの怪物の物語は惨劇と恐怖の物語にはならなくて済んだかもしれない。
一人取り残された怪物はその頑丈さで生き延び、隠れ棲み、幸運と偶然に恵まれて様々なことを学習した。
人前に出れば追われる醜さゆえに、一人思索にふける時間があった。
その思索の果てに創造主と対面した怪物がフランケンシュタインに向かって雄弁に語るシーンは、むしろフランケンシュタインに対してよりも情が湧く。
自分のカルデアにはまだフランがいないけれども、フラン萌えの人でなくてもむしろ怪物に同情したくなるのではないだろうか。

フランケンシュタインとケジメ案件

結局のところ、フランケンシュタインの周囲で起きた惨劇は全てフランケンシュタイン自身のケジメ案件だと言えなくもない。
憎悪の権化になることを選んだのは怪物自身であるとはいえ、最初のところで彼が逃げ出さなければ起きなかった惨劇だ。

しかし、フランケンシュタインが逃げる気持ちもわかる。
それまでの描写から想像される怪物の創造過程はひどくおぞましいものだろうし、その結果である恐ろしい怪物が動き始めてしまったら逃げ出さずにはいられないだろう。
何よりこの直後のフランケンシュタインは精神が衰弱しきっていたわけだし。

プロメテウス、火を盗んで人に与えたばかりに苦行を課せられた逸話に出てくる男の神の名が原題に入っているのは、つまりそういうことなのだろう。

ちなみに、ガルバニズムというスキル名の元ネタになったガルバーニ電流の名前も出てくる。
お手頃に読める長さなので、フラン愛の方はぜひ。

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